作業療法士国家試験の勉強は範囲が広すぎて何から始めていいかわからなくなりませんか?
何から始めるべきかわからないと何も手につかず、勉強意欲はだんだんなくなって、ついには勉強しない日が来るかもしれません。もしかしたらすでに勉強が手についていないかもしれません。このままでは国家試験に合格して、作業療法士になるのが一年遅くなってしまいます。
でも大丈夫です。この記事を読めば、国家試験の勉強を何から始めるべきか悩んでいるあなたも、今すぐ、やるべきことが明確になります。このロードマップは実際に作業療法士の養成校で教員をしているときに様々な学生に提示して効果を出してきた方法です。
もしあなたが、「何から」国家試験勉強を始めたらいいのかわからない、「何を」勉強したらいいのかわからない、と思っているのであれば、ぜひこの記事を読んでみてください。
自分の置かれている状況と合っているな、と思う状況を目次から探してください。自分の置かれている状況に合っている項目がない、という人はあまり役に立てないかもしれませんので、最初の全ての人に共通することを読んでみてください。また、目次を見て興味がある場所があれば斜め読みしてみてください。
ロードマップの前の準備
作業療法士国家試験の出題範囲を6つに分類する
国家試験の出題領域を大きく、基礎3科目(解剖・生理・運動学)、臨床医学(精神医学以外)、臨床医学(精神医学)、基礎作業療法系、作業療法治療学系(精神医学以外)、作業療法治療学(精神医学)の6つの領域に分けます。この領域の分け方で勉強をするときにおすすめの参考書はこちらになります。
勉強量の目安
6つの各領域は一つの領域を3~4日で進めます。このペースだと、国家試験の範囲が大体18~24日で一周できるので3週間前後で全ての範囲を学習したことになります。そして6領域を5周します。5周すれば合格の可能性は飛躍的に上がります。5周といっても1周するたびに3週間もかかりません。復習になるので、2周目はおそらく2週間以内に終わります。3周目は1週間以内に終わるでしょう。4周目と5周目は早い人だと1日で終わらせることができます。
このペースで勉強を進めれば、過去問5周は1ヶ月半あれば達成できるんです。こう考えると気持ちが楽になりませんか?そうすると、少なくとも1月の早い段階で学習を始めることができれば学習は十分に間に合うということになります。
学習内容の理解度について
理解は6割でいい。これをいつも頭の片隅に置いておきましょう。1周目は理解できません。むしろ、一周目で大体の範囲を理解できる人はゆっくり学習しても合格できます。一般的には3周目から4周目くらいで少しずつ理解できてきている実感が湧いてきます。最初から理解しようとすると、全く進まず、焦って勉強が身につかない効率の悪い学習になります。これを打開するには、わからなくて当然、まずは慣れる、と割り切って反復練習することがポイントになります。全てを理解することは難しいです。理解したい気持ちは重要ですが、理解しようとすることで勉強が進まないことが最も不合格になる確率を高めます。6割の理解で進めることで、少なくとも問題を考える力がつきます。この状態で十分合格を狙っていけます。
理解するより慣れること
養成校の先生や成績上位者のクラスメイトからは過去問を解くだけではダメ、過去問の内容を調べて理解しないといけない、と言われることがあるかもしれませんが、今までの指導経験から言えることは過去問を一通り解いて、慣れた状態からの方が確実に成績向上の効率がいい、ということです。まずは過去問の答えを覚える、過去問の傾向を捉える、過去問に慣れることを目的に学習を進めましょう。
10月前後から学習を始める人のロードマップ
開始時期としては早めです。養成校が国家試験に対して真剣に取り組んでいる証拠かもしれません。国家試験対策を行わない養成校もたくさんあるので、養成校が国家試験対策をしているの幸運なことです。養成校が国家試験対策に取り組んでいるのであれば、まずはその通りに学習を進めてみるのがいいでしょう。
養成校が特に対策をしていない場合は、少し自己分析が必要になります。まずは基礎3科目に苦手意識があるかないかで道が分かれていきます。
基礎3科目に苦手意識がない人のロードマップ
迷わず基礎3科目から始めましょう。その次に臨床医学(精神医学以外)、作業療法治療学系(精神医学以外)、臨床医学(精神医学)、作業療法治療学系(精神医学)、基礎作業療法系と進めていきます。この順で学習を進めていけば、年内には合格水準まで届きます。
基礎3科目に苦手意識がある人のロードマップ
この場合は精神医学に苦手意識があるかないかでさらに分類していきます。
精神医学に苦手意識がない場合
臨床医学(精神医学)、作業療法治療学系(精神医学)、基礎作業療法学系、臨床医学(精神医学以外)、作業療法治療学系(精神医学以外)、基礎3科目と進めていきます。この順で学習を進めていけば、年内には合格水準まで届きます。
精神医学に苦手意識がある場合
基礎作業療法学系、臨床医学(精神医学以外)、作業療法治療学系(精神医学以外)、臨床医学(精神医学)、作業療法治療学系(精神医学)、基礎3科目と進めましょう。この順で学習を進めていけば、年内には合格水準まで届きます。
11月中に学習を始める人のロードマップ
一般的な学習開始時期です。周りに勉強している人がいて焦っている人もいるかもしれません。学習時期としては一般的な開始時期なので、勉強が進んでいる人を見て焦るのがもったいないので、できることを進めていきましょう。勉強内容は10月開始のロードマップと同じように考えると良いです。
12月から学習を始める人のロードマップ
少し焦るかもしれませんが期間的にはまだまだ大丈夫です。私の養成校時代は12月までに学習を始めている人がクラスの半分くらいでした。残りの半分は卒業研究で国家試験は手付かず、という状況でした。それでも合格率は90%以上が続いていました。
12月からの学習は勉強したことがすぐに成績に反映されるのが理想的です。成績がすぐに上がると勉強の効果を実感できるし、勉強のリズムが作りやすいからです。
できるだけ早く合格点に近づきたい人のロードマップ
基礎作業療法学系から始めましょう。基礎作業療法学系は作業療法の評価学の内容が多く、覚えた内容がそのまま得点に結びつく問題が多いからです。臨床医学や基礎3科目の前提知識がないとわかりにくいところがあるかもしれませんが、わからなくても大丈夫と割り切って学習を進めるのがポイントです。基礎作業療法学系の問題が終わった後は、さらに得点に結びつきやすい精神領域に進みます。順番としては、臨床医学(精神医学)、作業療法治療学系(精神医学)、臨床医学(精神医学以外)、作業療法治療学系(精神医学以外)、基礎3科目の順にしましょう。精神領域は独特な領域で、この領域の学習だけでも得点がぐんと伸びます。精神科作業療法治療学の問題は臨床医学の精神医学の問題があるだけでも解ける問題がありますから、臨床医学の精神医学と治療学の精神医学を続けて勉強すると程よい復習になって効率的に点数を取れるようになります。
基礎3科目をやらないと不安な人のロードマップ
基礎3科目、臨床医学(精神医学)、作業療法治療学系(精神医学)、臨床医学(精神医学以外)、作業療法治療学系(精神医学以外)、の順で進めましょう。
1月から学習を始める人のロードマップ
1月の場合は開始時期が初旬か中旬かでロードマップが変わってきます。
成人の日の前までに学習を開始できた場合のロードマップ
この時期から始められた人は12月の方法と同様に進めてもいいです。お正月を満喫してしまい、成人の日くらいから始動開始となった人は、作戦を立てる必要があります。
成人の日の後から学習を開始した場合のロードマップ
この時期からの学習開始になった人は、まずは過去問三年分を全て解きましょう。全て解いて得点を出します。すでに過去問を何度か解いていて答えを覚えてしまっている、という状況でも構いません。できるだけ1日で、遅くとも2日以内で3年分解きましょう。3年分を解いて、専門領域(1番から50番)と専門基礎領域(51番から100番)までの正解の「個数」を出します。得点ではなく、正解の個数です。実地問題も一つとしてください。3年分の午前午後なので、専門領域の問題数が300問、専門基礎が300問になるはずです。正解の個数が多い方から学習を開始します。国家試験の学習は取れる問題を確実に取ることが合格への絶対条件になります。このためには苦手分野の克服よりも、得意分野を伸ばす方が効率がいいのです。意外かもしれませんが正解数が多い方から学習を始めましょう。
専門科目の正解が多い場合のロードマップ
作業療法治療学か基礎作業療法学の好きな方から開始して、専門基礎科目に進みます。専門基礎科目は基礎3科目と臨床医学の好きな方から始めていいです。どちらでもいい場合は基礎3科目から始めましょう。
専門基礎科目の正解が多い場合のロードマップ
基礎3科目から開始しましょう。その後に臨床医学に進みます。その後の専門科目では作業療法治療学、基礎作業療法学の順に進んでいきましょう。
2月から学習を始める人のロードマップ
この時期になると、よほど頑張らないと難しい時期になります。逆に言えば、よほど頑張れば合格できる可能性があるということです。寝る以外は勉強する、くらいの詰め込みができれば合格は可能です。実際に過去の学生の中で模試の点数が120点くらいの学生が本格的に2月から学習を始めて合格したことがあります。この時は国家試験の問題形式が過去問に類似していたことや、学習の進め方がこの年の国家試験問題の傾向にピタリとハマったこともありましたが、実際に合格できた人がいることは事実です。最後まで諦めない人が最後は勝てるいい例です。
学習内容は過去問3年分だけにしましょう。それ以外はやらない。まずは作業療法治療学を精神科も含めて全てやります。必ず参考書を利用しましょう。参考書の解説を声を出して読んでいきます。分からない単語やスムーズに読めないところ、意味が取れないところは付箋等で印をつけていきます。単語レベルでわからないことはすぐに調べていいですが、文章の意味がわからないところは飛ばしていきます。この次は基礎作業療法学、基礎3科目に進み、最後に臨床医学に進みます。勉強方法は作業療法治療学と同じようにしましょう。臨床医学は作業療法治療学や基礎作業療法学で疾患名が多く出てくると思うので、そのときに簡単な疾患のイメージを「参考書」を使って調べてみましょう。
参考書の解説を読むことは絶対ですが、調べたものも必ず声に出して読みましょう。これができるかどうかが結果を左右します。声に出して読むことで、国家試験合格の可能性は飛躍的に向上します。これは紛れもない事実です。声に出して読み続ける学習を実践すると記憶の定着や思い出すことに信じられないくらいの効果を発揮します。最後の最後は信じる者が救われます。
番外編 基礎3科目について
基礎3科目が得意な人のロードマップ
どんな時期でも基礎3科目から始めてください。得意の判断は、過去問や模擬試験を通じて、解剖学、生理学、運動学、全ての領域で毎回80%以上の得点率を出せること、と考えましょう。この状態の人はどんな時期でも基礎3科目をしっかりと学べば合格の可能性が高まります。基礎3科目を終えた後は、好きな順番に学習を進めて良いです。
基礎3科目をやらないと不安になる人のロードマップ
基礎3科目を最初に始めていいです。ただし、基礎3科目は遅くても2週間以内に終わらせること。基礎3科目は調べればキリがないほど調べることがあります。基礎3科目の学習に時間が取られて他の領域に手が回らない、模試で点数が上がらない、焦って勉強が手につかない、意欲が下がる、成績が上がらない、という流れが不合格者の中に非常に多いのが事実です。
基礎3科目の優先度について
私の考えでは、得意な人は優先度を高く、そうでない人は後回しにすべき、です。その理由は以下の通りです。
基礎3科目を最初にやるべきだと言われる理由は、少し前まで(印象的には約10年くらい前まで)は基礎3科目をしっかり勉強していれば確実に合格ができたから、という神話のような本当の話がもとだと思われます。実際、私個人の経験としても、現役時代に基礎3科目の学習が終わった時点で模試で168点以下を取ることは無くなりました。これは成績がいいとか悪いとかは関係なく、やればできるという事実でした。そこまで基礎3科目が得意でなくても、過去問を10年分くらい解き続ければ、十分に合格できました。おそらく今の30代後半くらいの作業療法士は同様に感じることだと思います。それがここ数年は変わってきていると私は見ています。
今でも基礎3科目が得意な人は基礎3科目を極めることができれば合格しやすい状況は変わりませんが、約5年ほど前、個人的な実感として53回くらいから基礎3科目の難易度が上がっている印象があります。よほど得意な人でない限り、基礎3科目の得点率が70%程度で伸び悩む印象があります。苦手な人はもっと下がるかと思いきや、そうでもなく、苦手な人が平均的に50%程度は取れる、という状況が続いています。そのためここ数年は基礎3科目に重点を置いて得点源にするよりも、基礎3科目については最低限の知識を持つことで70%を目指すのが合理的、という判断にいたりました。そのため、今回の学習ロードマップに関しても基礎3科目を最後に回していることが多いのです。
基礎3科目を最後に回すことの利点として、①基礎3科目の知識が臨床医学や作業療法治療学に結びつきやすい、②臨床医学や作業療法治療学を勉強すると自然と基礎3科目の最低限の知識がつく、の二点が挙げられます。このように基礎3科目を最後に回すことで知識の整理ができ、基礎3科目の知識が他の領域に結びつきやすくなります。
それから先は
以上で学習ロードマップの解説は終了になります。
5周以上終えた人や、200点以上の得点が取れている人は、曖昧な知識を覚え直すことを中心に学習計画を立ててみてください。