模試の結果が出ると、嬉しかったり、落ち込んだりして気持ちの波がありませんか?どんな結果であっても真剣に取り組んでいれば、誰だって不安になったり、落ち込んだりすると思います。
気持ちの波が弱いうちはいいのですが、波の変動が激しくなってくると不安が高まりやすくなり、すこしずつ国家試験対策に身が入らなくなっていきます。本当なら合格できる力があるはずなのに、不安の波のせいで力を発揮できないかもしれません。
これほど悔しいことはないし、そんな思いはしてほしくないです。そもそも、受験勉強中に悩んだり落ち込んだりする時間って、もったいないですよね。
今日はこんな悩みと決別するための考え方を紹介します。その解決方法は、模試の結果から考えられる学習到達度の目安知ることです。これを知ることで模試の後に自分のやるべきことが明確になります。受験勉強の悩みの多くは何をすべきかわからないことなんです。特に、模試の結果が良くない時は、今までの勉強方法を信じられなくなって、どうしていいかわからなくなってしまいます。逆に、やるべきことがわかると人は悩むことなく、行動に移ることができます。やるべきことが明確になれば、劇的に行動が変わります。頑張ろうとしなくても受験勉強に身が入り、どんどん合格に近づいていけるようになるんです。
実際に、この到達度の目安を伝えたことで、私が今まで受け持ってきた学生は、無理なく受験勉強に集中できる人が続出しました。やる気が起きないのも意欲が湧かないのも、何をすべきかわからなくなることが原因なんだな、と気づかせてもらいました。
全てを読む必要はありませんので、今の自分の模試の点数を確認して、当てはまるところから今後の自分の学習の指針を立ててみてください。
学習到達度と勉強方針について考える前に
模試の結果で考えられる学習到達度と勉強方針を考える前に、模試の難易度について知っておくといいです。
模試の結果をみる二つの方法
模試は二つの方法で結果を見ることができます。一つが模試の点数、もう一つが偏差値で見る方法です。それぞれのメリットとデメリットをまとめると以下の通りです。
点数のメリットとデメリット
- メリット
- 自己採点の結果ですぐにわかる
- 直感的に合格点との差が一目瞭然である
- デメリット
- 模試の難易度が結果に反映されないため、学習到達度を読み間違えることがある
- 結果に一喜一憂しやすくなる
偏差値のメリットとデメリット
- メリット
- 模試の難易度に関係なく学習到達度がより正確にわかる
- 模試を受けた人全体の中での自分の位置がわかるので、合格の可能性がわかりやすい
- デメリット
- 模試を受けた人の平均値や標準偏差がわからないと正しい計算ができない
- 正確な偏差値が出るのは模試の業者が全国のデータをまとめた後になる
毎年、毎回、模試の難易度は変わってきます。模試の中には、普通に国家試験対策をしていて解けるはずがないような問題が多いのが事実です。そのため、点数だけで判断することは危険を伴います。そういった理由で偏差値で判断するのが一番いい、と言えます。
ただ、模試のあと、すぐに偏差値がわかるのは恵まれている養成校だけかもしれません。多くの受験生は自分の点数の結果しかわからないのが普通です。
ですので、今回は、点数別、偏差値別での勉強方針をお伝えしていきます。ただし、優先するべきは偏差値です。偏差値がわかる場合は偏差値から考えてください。偏差値がわからない場合に点数から考えてみましょう。
偏差値について詳しく知っている人はここは読まずに、自分に該当する箇所を読んでみてください。
偏差値で何がわかるのか
偏差値は全ての受験生を得点順に並べていき、順番の真ん中の人が偏差値50になるように計算されます。偏差値がわかると、自分が得点順に並んだときの何番目くらいにいるのかがわかります。以下でお伝えする数字はあくまでも目安ですが、一つの参考としてみてみてください。
- 偏差値60:おおよそ上位15%の順位
- 偏差値50:おおよそ上位50%の順位
- 偏差値45:おおよそ上位70%の順位
- 偏差値43:おおよそ上位75%の順位
- 偏差値40:おおよそ上位85%の順位
おおよその順位の%は試験の難易度によって変動するので、あくまでも参考程度に考えてください。
なぜ、この数字をわざわざ出したのかというと、作業療法士国家試験の合格率が平均して80%程度になる、という事実から自分の合格可能性を導き出せるからです。国家試験の合格率は、言い換えると受験生の上位何%が合格です、ということになります。つまり、偏差値43程度あれば合格の可能性は高くなってくる、ということが言えるんです。偏差値を知っていると、以下のような状況で考えたときの結果の判断が変わります。
- 模試の点数が180点で偏差値が40の人
- 模試の点数が140点で偏差値が45の人
どちらが合格の可能性が高いかわかりますか?正解は模試の点数が140点で偏差値が45の人ですね。これが、得点だけで見ると危険という理由です。点数が180点あれば一般的には合格基準に達しているので喜んでしまいますよね。でも、偏差値を見ると危険水域です。一方で点数が140点で落ち込んだとしても、偏差値が45もあるのであれば合格の可能性は高いと言えるでしょう。
偏差値を使うことで、点数で一喜一憂することなく、自分がやるべきことがはっきりとわかるようになるんです。それでは、偏差値の求め方を補足しておきます。
偏差値の計算の仕方
偏差値の計算式は以下の通りです。
(個人の点数ー平均点)➗ 標準偏差 ✖️ 10 ➕ 50
この時の平均点は、本来であれば模試を受けた人全員の平均点です。標準偏差とは、試験結果の得点のばらつきを示す値で、難しい計算が必要になります。
ただ、この式を模試をやった直後に出すことは不可能に近いです。模試を受けた全国の人の平均点をすぐに知ることはできないし、標準偏差を出すことは不可能でしょう。よって、より簡便な次の式を提案します。
(個人の点数ー平均点)➗ 2 ➕ 50
クラス内の平均やある程度の平均点がわかったら、この計算で一応の標準偏差を出すことができます。おそらく、プラスマイナス2前後の違いがあると思いますが得点だけで判断するよりは安全です。
模試の結果から考える学習到達度とやるべきこと
偏差値40未満もしくは110点未満の場合
到達状況:学習量の不足、もしくは学習方法が間違っている
やるべきこと:とにかく過去問を最低3年分、できれば5年分を何回もやりこむこと。答えを覚えることを目的にしてもいいので、とにかく何度も過去問を繰り返しやること。答えを覚えてきた感覚があれば、なぜそれが答えなのかを覚えることを意識して、説明できるようにすること。
偏差値43前後もしくは120点~135点の場合
到達状況:過去問を一通り実施したが定着しているレベルまではいかない(反復の効果は少なめ)
やるべきこと:覚えきれていない問題がある可能性があるので、過去問を再度復習する。5年分はやり込むこと。勉強で意識すべきことは、なぜそれが答えになるのかを覚え、説明できるようにすること。答えだけを覚えているとその先に進めません。
偏差値45前後もしくは150点前後の場合
到達状況:過去問学習の効果が出てきていて、基本的なことは身についている(反復効果が出ている)
やるべきこと:模試で点数を取れなかった分野だけ過去問を復習すること。この時、自分の言葉で説明できない問題や知識があれば、参考書や教科書を使って調べて、説明できるようにすること。この点数まできたら本格的に調べ学習を開始していき、使用している参考書に書き込みをしたり、ノートを作り始めるとよいです。調べ学習は、必ず問題を解くための知識を調べること。手当たり次第なんでも調べる、という勉強法は成績をおとす要因になります。
偏差値50前後もしくは180点前後の場合
到達状況:調べ学習の効果が出てきているが、基礎3科目、臨床医学、基礎作業療法学系、治療学系、のどこかの分野で苦手なところがある。
やるべきこと:結果から苦手分野を発見して、調べ学習を深めていくこと。調べ学習の時は、参考書ではなくて教科書を積極的に使い、文章を読み込むこと。この時、自分の感覚として苦手を決めないことが大切になる。苦手だと思っているところでも点を取れている可能性はあるし、そもそも国家試験の出題頻度として優先度が低い可能性もあります。主観は時として、間違えた方に進むことがあるので、結果を中心にして考えましょう。
偏差値50以上もしくは200点前後の場合
到達状況:調べ学習の効果がほぼ出てきている。本番は基本的に合格できるレベルだが、緊張しすぎて不安が高まると、万が一落ちる可能性があるレベルである。
やるべきこと:模試で間違えたところや知らなかった知識を調べて、ノートにまとめていく。できれば、今まで実施してきた模試の問題を解き直す。国家試験本番に見返すためのノート作りをする。もしくは、自分オリジナルの問題集を作成して、国家試験本番を意識した学習を始める。
偏差値55以上もしくは220点前後の場合
到達状況:勉強することがなくなってきて、勉強することを探さないといけなくなるレベル。逆に暇になってきて意欲が下がってくる人もいる。ここまでくると、本番までに勉強することをやめない限り、落ちることはない。積極的に人に教えていけるレベル。
やるべきこと:自分の知っていることを自分以外の人が理解できるように説明できるようにする。アウトプットしてみると、微妙に理解できていないところが浮き彫りになってきます。微妙に理解しきれていないところを再度調べ直すと、新しい発見があります。模試の解き直しを積極的に実施して、解けなくてもいい問題を見極めましょう。このレベルまで来てわからない問題やあまりみたことがない知識がある場合は、そもそも変な問題であり、解けなくてもいい問題であると言えます。そういう問題を見極める力を養うことは大切です。本番当日に見返しておきたいことを優先順位別に、ノート3ページ分くらいずつにしてにまとめていくといいでしょう。
補足
目標は220点
偏差値50前後もしくは180点くらいまでくると合格が見えてきますが、ここ数年はこのレベルの学生で不合格となる人が意外と多いです。180点くらいのレベルだと、苦手分野が明確で、国家試験本番でわからない問題や見慣れない問題に遭遇してパニックになりやすいからだと推測しています。また、過去問学習が進み、わかる問題が増えてきているので、わからないことに対する動揺が強くなる時期といえます。合格が見えてきたところで再度気持ちを入れ直すことが合格のためには大切です。
最後まで諦めないこと、最後の2週間の学習効果はものすごい
受験生は最後の2週間で劇的に成績が向上します。これは現役生だろうと浪人生だろうと同じです。適切な学習方法をしている人は、最後の2週間で確実に成長します。これは逆にいうと、模試で偏差値45程度取っている人でも、最後の2週間で気を抜くとあっという間に下の人たちに抜かされてしまうということです。絶対に気を抜かないようにしましょう。
誰でもできる、力をつける方法
継続は力なり、いつも自分に言い聞かせてください。勉強のペースを崩さないようにしましょう。疲れた、休憩したいと思ったら、少しだけ勉強してから休憩する癖をつけましょう。具体的には、休憩前に間違えたところや知らなかったところを見直してから休憩するとか、もう一つだけ新しいことを学んで休もう、といった行動が合否を分けます。本当に少しのプラスアルファができれば確実に成長します。ただこれだけでも十分合格できる力が身につきます。
120点の壁、150点の壁、180点の壁とブレークスルー
国家試験の勉強をしていると、伸び悩みの壁が出てきます。それが、120点、150点、180点です。この得点前後に成績が伸び悩むことが多いです。この伸び悩みの時期をどう過ごすかが本当に大事です。各得点の時のやるべきことを再度確認してみてください。とにかく耐えること。この得点域にいられるということから、勉強内容を逆算することができます。そして、耐え抜いた人にだけ起きることが、急激な成績アップです。この急激な成績アップのことを個人的にブレークスルーが起こる、と言っています。
壁にはまり込んだ期間が長ければ長いほど、その壁を乗り越えた時の成績の上がり方はものすごいです。国家試験直前の模試までに130点前後しか取れなかった人が本番で190点取れる、ということがよくあるのは、ブレークスルーが起きるからです。これは奇跡でもなんでもなく、勉強を続けていると、色々な知識が繋がる瞬間がきます。意識できる人もいれば、意識できない人もいる。これは結果が出て初めてわかることです。壁にぶつかったときこそ、最後までやり続ければ、必ず本番で結果を残せます。信じて勉強を続けてみましょう。